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ロザリー加入1

やっとこさロザリー加入話です。
でもロザリーさんの出番少ないです。
若干シャルモモ。

ちょっと長めです。

眠いのでレスは明日返します。

※試験的にブログの各エントリーに拍手設置しました。
こちらはお礼絵が表示されません。お礼絵機能がつくといいんですけど……。

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「やっぱ無理!」
飲み干したグラスを勢い良くテーブルに置く。
グラスの中でくるくると回る氷は、カランと小気味の良い音を立てて落ち着いた。
もっともそのグラスを握り締めるシャルルの方は全く落ち着いていない。同じテーブルに着くメンバー……つまり自分の所属するギルドの面々であるが……をじっとりとした目で見回す。
彼のグラスの中身はただの葡萄ジュースであり、どれだけ目が据わっていようとシャルルは酔っているわけではない。
シャルルは単純に苛立っていた。
「えぇと……何がかな、シャルル?」
一応は年長者であるグリオンが代表して声を掛ける。
「お前さ、曲がりなりにもリーダーだろ。ちっと考えればわかるだろうが」
手に付いた水滴を布巾で拭い取ると、上品とは言えない手つきで大皿に乗った揚げ物を掴み取る。
「モモヒメが修行不足でまだ回復魔法できないだろ? 先頭立って戦わなきゃなんねぇお前が唯一の回復役なおかげで、戦いは長引くわ、回復しきれないわで、この有様じゃねぇか。アイテムだってタダじゃねぇし」
シャルルの文句ももっともだった。
今日も探索は成功したとはいえ、帰りは負傷者を引きずるようにしてカザンまで辿り着いている。
隣の席でサラダをつついているメルクは腕に巻かれた包帯が痛々しく、モモメノは両膝に大きな絆創膏を貼っている。リーダーのグリオンは前衛で全員を守る分、傷も多い。
怪我を恐れるわけではないが、怪我をするために冒険者をやっているわけでもない。
出来る限り怪我を避けるのも、この仕事で食っていく以上重要な点だ。
「それは……うん、ごめん。僕が頼りないせいだ」
「グリオンのせいじゃないでしょ。自分のせいにしちゃうのは簡単だけど、何の解決にもならないんだから」
「いや。僕が強かったら、メルクにこんな傷つけないで済んだよ」
確かにメルクの怪我はグリオンのミスだった。痛みに動きが鈍った瞬間を狙われ、それをメルクが庇っての傷だ。
「仲間なんだからフォローは当然。いちいち気にしてたらやってらんないだろ」
「そうよ、思い上がらないで。私がまだ何も出来ないのが、よくない。一番、役に立ってない……」
「いえ、姫が気になさることではありません。私が不甲斐ないのです」
空気が沈んだのを見て、シャルルが斜向かいのグリオンの頭をはたく。
「だーかーらー、どいつもこいつも悪いんだよ! オレもまだ術の行使に不慣れ、グリオンは能力を生かせねぇ、メルクは弓に転向したばっか、モモヒメはみそっかす!」
ずばりと言い放つと、シャルルは声高々に宣言した。
「そういうわけで! オレはヒーラーの加入を強く希望する!」
「え?」
「飯終わったらスカウトだ。担当は言いだしっぺのオレ、それからモモヒメ」
「ふ、二人きりで?」
ぼんやりと視線を上げたモモメノと、フンと鼻を鳴らすシャルルを交互に見やる。
同じギルドの仲間だとはわかっているが、やはり大事な姫を預けるのは不安らしく、その顔は納得していない。
「どうせモモヒメが気に入らなきゃどんな人材も入れられないんだろ? だったらコイツ連れて行くしかねーじゃん。お前らは仲良く怪我治してろ」
焦った様子のグリオンをよそにあっさり決めてしまう。
傍から見たら、年少であってもシャルルの方がリーダーと思うかもしれない。
気遣いを欠かさないグリオンがばっさり決定を下すことはまずなく、常に熟慮に熟慮を重ねる。慎重さは美徳だが、時と場合によっては即決も大事だ。
食事が終わるまで渋っていたグリオンだが、ため息混じりに二人での行動を承諾した。



おどおどとしたモモメノはシャルルのマントをぎゅっと掴んでいる。
年齢はモモメノの方が上のはずだが、時折シャルルは年下の少女を相手にしているような気分にさせられた。
本来ならこのようなタイプは苦手である。モモメノは好きと嫌いにだけアグレッシブな一面を見せるが、それ以外では実におとなしい。はっきりと主張はしないし、いつも人の陰に隠れている。何よりも、陰気だ。人を楽しくさせる娘ではない。
普段なら苛立つ。だが、モモメノは違う。
たぶん、モモメノという生き物が面白いからだ。退屈を嫌う彼にとって、特異な存在は全て好ましく映った。
出会いは強烈だった。
目の前に青い髪が揺らめいたかと思った次の瞬間には柔らかな体に抱きしめられ、見事なまでに椅子から転げ落ちた。
気に入った人間には抱きつくらしいと聞いたが、自分のどこをそんなに気に入ったのかわからない。我ながらつまらなそうな顔をしていた自信がある。
「第六感ってやつじゃない?」
一番最初にモモメノに気に入られたメルクは適当な返答を寄越した。
今のところこれだという解答が思いつかないので、シャルルもそう思うことに決めた。
だから、仲間探しでやることは一つ。
モモメノとシャルル、二人が共に気に入る相手を探すことだ。
「言っとくけど、オレ、あいつらみたいにお前が気に入った奴を無条件で仲間に入れたりしないかんな」
「うん……」
「オレにも相性ってのがある。もちろんあちらさんにもな」
「うん……」
「だからオレが嫌な時は諦めろ。オレもお前が嫌がったら諦めてやる」
「うん……」
「で、アイツはどうよ?」
「イヤ」
「あいよー」
ギルドオフィスを訪れる人間の顔をシャルルは淡々と眺める。
ヒーラーに限って言えば、何人か悪くない面構えをした者たちがいた。もちろん「容貌の良し悪し」の話ではなく、内面的な意味でだ。
だが、今いる面々はモモメノの琴線には響かなかったらしい。
シャルルに縋るようにマントを掴み、背中から出てこようとしない。
「あのさ、いいと思ったら、オレに言えよ。まず最初にだぞ。飛び出して抱きついたらオレ怒るからな」
「……」
「モモヒメ、聞いてんの?」
視線をドアから隣のモモメノに移す。
マントを掴んだ手はしっかりと握られたままだったが、モモメノの視線はおどおどしたものから光に満ちたものに変わっていた。
「あの人、あの人がいいわ」
「どれ?」
指の代わりにウサギのぬいぐるみの手で指し示す。
その先にはふわりと揺れる赤毛が美しい少女がいた。カウンターで
年齢はモモメノより上くらいだろうか。モモメノに慣れてしまうと、少し年齢を見分ける感覚が鈍るのだが、そう変わらない年代なのは確かそうだ。
手には巨大な槌があり、一見して所謂殴りヒーラー……つまり回復だけでなく戦闘も得意なタイプだと見て取れた。
「うへ、おっかねぇな」
シャルルの武器は杖だが、片手で軽く扱える分、威力は物足りない。
だが、あの巨大な槌なら期待できる。敵によっては一撃粉砕も可能だろう。
それを細腕の少女が振り回すのだから、恐ろしい。
「そんなことない……彼女、とても綺麗」
うっとりとした響きが漏れて、シャルルは少し眉をひそめた。
出会い頭に自分に抱きついてきたくせに、モモメノの関心は美少女にばかり向かう。
なんだか微妙な気分に陥る。
「お前、結構メンクイな?」
「めんくい?」
「綺麗な顔が好きなんだなってこと」
「顔じゃないよ、空気が綺麗。メルクも貴方も。だから好き」
「オレの空気はンなことないだろ。グリオンはどうなんだよ」
「あの人は……綺麗というよりも高潔。少し面倒」
そう言われると、わかる気がする。
目標や理想に突き進むグリオンの姿勢をけなすつもりは毛頭ないが、とにかく融通が利かない。ルールがあればあるだけ、喜んで縛られていくタイプだった。
「低俗な騎士よりかマシだけれど」
そりゃまあそうだと頷いて、シャルルはもう一度少女の値踏みをする。
持ち物はいい。服は上等な布地をふんだんに使い、巨大な槌は今の彼らでは届かない金額のものだ。
どこかの名家の育ちかもしれない。
肝心の回復魔法の腕は見せてもらわないことにはわからないが、しっかりと前を見据えた瞳が気に入った。
「よし、アイツに声掛けてみようぜ」
そう口にすると、モモメノは頬を緩めてわずかに笑って見せた。



オフィスのカウンターの前には少女が一人いるだけだ。
ちょうど客足が途絶えたところのようで頃合もいい。
応対していたエランが二人の存在に気付き、気を利かせてか奥に引っ込んだ。
「おい、お前」
背後からヒーラーの少女に声を掛ける。
その直後、シャルルの目の前を散ったのはきらきらと輝く星だった。



二話で終わりの予定。
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