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【バレンタイン03】ルシェ騎士×青ローグ

本日はウチのメインだけど書きづらいグリメルですよ。

気付いたらバレンタイン当日ですね。
いただいたチョコレートを美味しくいただきました。

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メルクの朝は早かった。
普段も比較的早い起床だが、今日はまだどこもかしこも暗い時間だ。
布団から這い出し、簡単に準備を終えると、音を立てずにキッチンへ向かう。
花嫁修業をしているというだけあって、前日のうちにバレンタインの準備をしていたロザリーの後片付けは完璧で、文句の付け所がない。
グリオンやモモメノにこのレベルを要求するのは無理難題だろうが、せめて几帳面なシャルルくらいの使い方はして欲しい。
零したら拭き取るとか、ものを置きっぱなしにしないとか、その程度のことが出来ないらしい。ぼんやりしているモモメノはともかく、グリオンは意外にも大雑把なのである。
「さて、やりますか」
エプロンをつけ、腕まくりをする。キッチンは寒いが暖房器具は付けない。
節約したいのもあるが、しばらくすればオーブンに火を入れることになるのだから、寒さなどすぐに気にならなくなる。
下準備しておいた食材を棚から取り出すと、メルクは調理を開始した。



いい香りが漂う頃、グリオンが起き出して来た。
朝の鍛錬を欠かさないため、起きる順番は大抵一番だ。
「あれ、メルク? 珍しいな、休みだから寝てると思ったよ」
物音に気付いてキッチンに入ってきたグリオンは、早朝から働くメルクに驚いて声を掛ける。
早起きとはいえ、確かに休みの日はゆっくり過ごすことが多い。朝食もお腹が空いたら各自適当に取るか、時間を遅らせてブランチにしてしまうかのどちらかだ。
「馬鹿。先に済ませないとモモメノが使えないでしょ」
「姫が?」
焼き上がるのを待つだけになっているメルクはコーヒーの入ったカップを両手で包み込むように持つ。
オーブンでは部屋全体が暖かくならず、全体的にはまだ部屋は寒いままだ。
「今日を何だと思ってるのよ。バレンタインよ、バレンタイン」
「あ……そうか。実家じゃないから忘れてたな」
たぶん素で忘れていたのだろう。
それなりに綺麗な顔をした若く腕のいい騎士があまりモテない理由はそういうところにあると個人的には思っている。一番大きいのは残念すぎるほど鈍いところだろうが。
「グリオン、実家にいたときはもらってたの?」
過去のことはどうでもいいのだが、多少は気になる。
自分自身のことを滅多に話さないメルクは、他人にもそれを強要しない。機会があれば話してもいいとは思うけれど、当時の仕事についてグリオンたちが知る必要性がどこにあるだろうか。
だから、グリオンがどういう村で育ち、どうやって騎士になったか、などは全く知らなかった。
竜が出現してからというもの、ろくに話もしないまま突き進んで今の微妙な関係があるのだ。
「僕の村は若い人がほとんどいなかったんだけどね、ご近所の奥様方がいい人ばかりで。毎年くれたんだ」
「へぇ……いい人、ねぇ」
まさかの人妻キラーだったとは、と内心思ったが口にはしなかった。気付いていないならそれはそれでいい。
「でも、姫もチョコレート作るのか……いいなぁ」
「あんたにあげるんじゃないよ、言っておくけど」
「わざわざ言われなくてもわかってるよ。どうせシャルルにでしょう」
「ご名答」
「ですよね……。わかっていることなのに、どうしてショックを受けるんだろう」
懐かれていないことを自覚しているグリオンは肩を落とす。
ルシェの男にはないはずの尻尾と耳が見えた気がして、哀れに思えてきた。
敵ではないのだから塩だけじゃなく砂糖も送ってやってもいいかと、一応のアドバイスを考える。
「じゃあさ、欲しいですって言ってみれば? 素直に言えばくれるよ」
「そういうものかな? すごく冷たい目で見られる予感がして、恐ろしくて言えない」
「あんたねぇ……その考え方がよくないんじゃないの? もっと背筋伸ばして、堂々としてればいいじゃん。曲がりなりにもモモメノの騎士なんだから」
これでいて戦闘中は案外いいコンビなのだ。
守りに徹することが多い分、プリンセスオーダーの出番は少なかったが、いざというときの二人は本当に頼りになる。それをプライベートに反映できないのが不思議なのだが、「騎士と姫」という役割における彼らなりの線引きの表れかもしれないと思うと、部外者は口を挟めない。
「それでメルクは?」
「うん?」
「誰にあげるの?」
「……え、えっと、これは」
話が自分に飛び火したことに気付いたが、言葉がまとまらない。
今焼いているチョコレートケーキはギルドのみんなで分けるつもりで作ったものだ。
結局「バレンタインを一緒に過ごしたい」とは言い出せずに当日を迎えてしまった以上、そうしてうやむやの内に渡してしまうのがベストな選択だと思えた。
それなのに、このシチュエーションだ。
一歩さえ踏み出せれば、今なら特別なバレンタインの贈り物をすることが出来る。
予定と合わない状況に頭が混乱してしまった。
「ごめん。早起きして作るくらいだから、意中の人がいるのかと思って……」
グリオンが言葉を切ったのを合図にしたようにお互いに黙ってしまう。
冬の寒い日特有の静けさがキッチンにまで舞い降りて、居たたまれない。
このままでは「誰か好きな男がいる」と誤解されてしまう。それは困る、とっても。
「た、食べる?」
「え?」
「あ、甘いの嫌いだったらいいよ! モモメノ甘いの好きだから、砂糖たっぷり入れちゃったし、口に合わないかもだし……」
どうせあとで全員に切り分けるのだ。少し早くなっただけだというつもりで言い出す。
「いえ、欲しいです」
「グリオン、無理してない?」
「まさか! 素直に言えばくれるって、言ったじゃないですか」
「言った……けどさ、でもそれはモモメノの話じゃん」
「僕はメルクから欲しいです……駄目ですか?」
「……駄目じゃ、ない」
まただ、とメルクは胸の高鳴りに息を呑んだ。
どうしてこの男は過剰に舌が回るのだろう。自分が何を言っているのかわかっているのかと問い詰めたい。
その台詞はほとんど告白に聞こえるけれど、そのつもりで口にしているのか、と。
「よかった! すごく嬉しいです」
「じゃ、じゃあちゃんと包んであげる……」
「包んでくれるんですか? 本当にバレンタインの贈り物みたいです」
馬鹿、とメルクは小さく呟いた。
まるでじゃなくて、本気でバレンタインの贈り物だ。あそこまで言っておきながら義理チョコを受け取るつもりでいるグリオンがわからない。
嬉しそうに笑う騎士に本命チョコだと言ってやったらどうなるだろうかと思いながら、メルクはチョコレートケーキが焼き上がるのを待った。




書きづらい理由はグリオンが敬語使ったり使わなかったりだからだとやっと気付きました。
姫以外とは普通に喋るのに恋愛スイッチが入ると敬語になるとかなんでそんなめんどい設定したんだろうなw
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