一刀不敗編の最終話になります。
私は本当にローグと騎士の組み合わせが好きでしょうがないみたいです。
気づいたらサブギルドの中心カプもログ騎士っぽい。
ちょっとエロゲやったり生配信行ってたら終わんなかったので、残りは明日です。
ていうかアレノラが全く動かないwwwネタ決まってるのに書けないwww
町で見るよりも、この屋敷からの夜空のほうが美しかった。
山との境界線が曖昧な庭に出ると、今日一日見かけなかった相棒の後姿を見つける。
「ユスタス?」
ウェーブがかった髪と褐色の肌を持つ男が月光に照らされて振り返った。
「おかーえり」
「ただいま、でしょう? 朝からどこに行ってたんです?」
「いやー、その辺をぶらぶらと」
悪びれずに笑顔で答える。
ケイトも詰問したかったわけではないので、その件については深く聞かず、今日の目的を思い出す。
「そうだ、ユスタス。ちょっと待っててください。絶対に動いちゃダメですよ!」
今を逃してしまえば、すぐに明日になってしまう時間だ。
念を押してから、ケイトは急いで自室に戻った。
ケイトの部屋の古いテーブルの上には最後の箱が残っている。
ガッサンに用意していた大きな包みは、朝に渡した。
ケビンに選んだ薄い箱は夕食後に、イクラクンと一緒にどうぞと手渡してある。
ヤックには帰宅してから改めて渡した。
最後の一つは、一日中顔を見なかったユスタスへの贈り物になる。
手に取ると、また庭へと出て行った。
「お待たせしました」
律儀に『動くな』と言われたときと同じ姿勢でユスタスは待っていた。
そういえば、とケイトは思う。
ユスタスはいい加減だが、言った事は必ず守ってくれる。こんなくだらない事柄でも必ず。
「受け取ってくれますか?」
「お、バレンタイン?」
差し出した箱を見て、やっとユスタスが姿勢を変える。
「はい。評判のお店だそうですよ。ユスタス、そういうの好きでしょう?」
どこから情報を仕入れてくるのか、ユスタスは流行の店や、名店などに詳しい。
今まで何度か連れて行ってもらったり、お土産だともらったことがあるが、評判になるのも納得のものばかりだった。
「ん? あぁ、ま、そうだな」
不思議と歯切れが悪かったが、ケイトは気にせず、持ってきた箱を渡す。
落ち着いた色合いに金の飾り紋がさりげなく散っているデザインが彼女好みであり、ユスタスの好みでもある。華やかな雰囲気を持つ男だが、派手なのは好きではないと知っていた。
しげしげと箱を眺めていたユスタスは、しばらくして動きを止める。
視線は箱の一点に固定され、嬉しげだった表情もわずかに歪んだ気がして、それがケイトの息を詰まらせる。
「これ、本当はオレのじゃないだろ?」
「……どうして?」
気づかれるなんて、思ってもいなかった。
「ちっこいハートが付いてる。こんな可愛いこと、オレにはしねぇよ」
「……するかもしれないじゃないですか」
「かもな」
「……したっていいじゃないですか……!」
ヤックに用意したチョコレートも、ユスタスに用意したチョコレートも中身は同じものだった。
ユスタスの好きそうな店を探し、そこで一番気に入ったものを選んだ。ヤックにも自分が気に入った一番をあげたかった。
中身が同じでも、込めた気持ちだけは違う。
小さなハートのシールは、渡せなかった本命の証。
『俺、初めて好きな子からチョコもらったんだ』
あの一言で、恋心はバッグの一番奥にしまわれてしまった。
代わりに渡したのは、本当はユスタスに選んだはずの、感謝の気持ち。
いつもありがとう。助けてくれてありがとう。これからもよろしく。
「ケイト」
ユスタスの声がすぐ近くでケイトを呼ぶ。
「胸、貸してやろうか? 腕でも肩でも足でもお前の好きにしろよ」
優しく、落ち着いた響きが辛く、けれど甘えたい。
「……っ」
「無理すんな、馬鹿」
「む、胸貸して……今日だけ……」
「おう。来い」
手を伸ばし、体を寄せて、しがみついた。
男の腕がケイトの体を受け止め、ゆっくりと緑の髪を撫でる。
深い藍に浮かぶ月と星とユスタスだけがケイトの涙を見ていた。
ユスタスは評判のお店が好きなのではなく、評判のお店をケイトに教えるのが好きです。
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