恐る恐る伸ばされた手は、メルクに触れると同時に力強いものに変わった。
怖がる必要などないというのに、グリオンはいつもそうだ。
実際に触れ、メルクの体温を感じるまで、表情も力も弱々しい。
好きな男の腕を拒絶するわけなどないのに、直前まで恐れている。
それでいて、指が届けば強引に自分の領域に引き寄せてしまう。
我慢のきかない子供と同じだ。
「グリオンってホント馬鹿」
あやすように背中に手を添えると、グリオンの力はますます強くなり、抱き合う体の隙間がゼロになっていった。
体全てがグリオンの熱に触れているようで少し恥ずかしくなる。
「メルクの前では僕はいつだって馬鹿な男です」
耳元に落とされる声は甘く心を捕らえた。
ギルドのリーダーでも、姫の騎士でもない、ただのグリオンは、自分だけのものなのだと。
そう言われているようで、たまらない気持ちになる。
「ホント、馬鹿……」
額をグリオンの肩に押し付け、幸せなため息をついた。
付き合ってないつもりで描き始めたんですが、メルクの表情が甘いので、付き合ってる版小話に変更。
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