バレンタイン04でグリオンにチョコ作りさせてた姉さんのターンです。
我が家では珍しい同職カップル・侍×侍です。
※ここから設定※
ナムナ
グリオンの実姉で、儚げな見た目を裏切る血に飢えた感じのお姉さん。
打倒剣聖を目指し修行していたはずが、結婚して夫婦ギルド結成。
グリオン曰く「姉は女性ではなく、何かもっと別の恐ろしいもの」
シシマル
おおらかで基本嫁任せな旦那。ナムナが行く場所ならばどこへでも着いていき、時には守り、時には守られ、支え合っている。
嫁は血に飢えているが、こっちはそういうことはない。
※書き終えたの全部消してしまったorz すごいショック……
海上を駆け抜ける風に大きな羽織をなびかせながら、ナムナは進行方向を睨み付ける。
鋭い目は可愛らしい容姿とかけ離れたものだが、彼女の本質はそこにある。
「全く……何で私があの馬鹿のためにここまでしなきゃならないのさ」
彼らの目的地はカザンだ。
正確にはカザンを拠点とするギルドに所属している弟に届け物をすることが目的となる。
送り主はナムナとグリオンの故郷のご婦人方……つまりグリオンファンの奥様からのバレンタインの贈り物の数々を「ナムナちゃん、届けてね!」と軽いノリで預けられてしまったわけだ。
「あー、気が向いたからって実家に帰るもんじゃないね。バックレちゃおうかな、バックレてもいいよね、バックレたい!」
口ではそう言っているものの、実弟の半分くらいの真面目さは持ち合わせている。仕事として引き受けた以上大事に届けるのは当然だし、本気でそんなことをしたら仏のようなシシマルもさすがに咎めるだろう。
「はぁ……嫌な仕事」
商業船に護衛として乗り込んでいるため、夫であるシシマルはいつものようにナムナの隣にぴったり寄り添っていない。
彼女の不機嫌の理由の一つがどこにあるのか自覚しているシシマルは、二、三歩ナムナに近づいた。
きりっとした眉はそのままに口元は柔らかく弧を描き、視線は限りなく優しい。可愛さを突き破る棘を放つナムナと違い、シシマルは強固な精神と柔軟さをバランスよく有するタイプだ。
腕は立つが何かとトラブルを起こしやすい妻を支え、大きな問題とならないようにさりげなく配慮する。もちろん危害が及ぶようならば、全力で妻のために刃を振るう覚悟もある。
「何笑ってんのさ」
「我が妻の愛らしさに顔を綻ばせていただけだ」
「んもう! 褒めても何も出ないよ!」
「お前はいるだけで贈り物だ。更になど罰が当たる」
「シシマル……っ!」
感激したナムナだが、一応は仕事中なので、抱きつくことは自重した。
あたりへの警戒は緩めずに、会話を続ける。
「ねぇ、あんた。明日にはカザンに着くよね?」
「そうだな」
「でもって明日はいよいよバレンタインだねぇ」
「そのようだな」
「一日くらい届けるのが遅れたっていいよねぇ? あの子だって過ごしたい相手がいるでしょ」
その相手がギルドのどっちの娘かまではナムナも確信は持っていない。何せ一度しか会ったことがないし、そもそも弟のことなどどうでもいい。
大事なのは自分と、刀と、最上級の夫だけだ。
「そんで、私たちもバレンタインっぽく過ごそうよ。ね?」
シシマルが数歩、ナムナに歩み寄る。
定位置……ナムナの隣まで後わずかの距離。
「お前が望むままに」
最後の一歩はナムナが詰めた。
「そんで、あんたがしたいようにさ」
ほんの少しだけと胸のうちで言い訳して、シシマルの肩に頭を寄せる。
ぴくぴくと嬉しそうに動く愛妻の耳にシシマルは一層柔らかな笑みを浮かべた。
めっちゃ思い出しながら書きました。普段はもっとこまめに保存かけるのに……。
一番の馬鹿ップルはたぶんここです。
PR