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【バレンタイン2-05】片目ローグ←緑騎士

本日も二本同時更新です。

ここは完全なる一方通行ですので、「イチャイチャじゃないのはいや!」という方はご注意ください。
うちのケイトはユスタスがいつか幸せにしてくれるはずなので、きっと大丈夫。

メインギルドのヤクモモ話と繋がってます。
それにしてもどうしてうちのヤックは何かこう……残念なんだろうな。一応イケメン設定のはずなのに。

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夕焼けに染まっていた空は、気付けば一面の星空に変わっていた。
街灯が点々と灯る町の一角ではその空の光が弱くなるけれど、目のいいケイトはいくつもの星を確認することができた。
だが今日の目的は星見ではない。すぐに視線を町に戻し、待ち人の姿を探す。
カザンまでは距離があり、山を一つ越えなくてはならないが、そこまでは乗り合い馬車が出ているために、大体の戻り時間の検討はつく。
何事もなければそろそろのはずだと、人の波の中に顔を探していると、長身の男がこちらに来るのがわかった。背が高い分探すのが楽でいい。
自分の前を通るところで、声を掛けた。
「ヤック、お帰りなさい!」
聞こえてないのか、ふらりとした足取りで目の前を通り過ぎてしまう。
「あの、ヤック? ヤック!」
慌てて追いかけると、腕を掴んで正面に回りこんだ。
「ヤック!」
「わ! ご、ごめん、呼んだ? ていうかケイト?」
ここまでされてやっと気付いたヤックはきょとんとした表情で目の前で心配そうな顔をしているケイトを見下ろした。
「えぇ、私ですけど……あの、大丈夫ですか?」
なんだか様子がおかしいヤックから手を離し、顔を覗き込む。
血色は悪くないが、少し肌が赤い気がする。
「全然大丈夫~……いや、ちょっと大丈夫じゃないかも。大丈夫だけど」
「どっちですか? 具合でも悪いんですか?」
「具合はへーき……ただ幸せすぎて、俺おかしくなりそ」
ヤックの言葉に疑問符を消えないままだったが、いつまでも往来の真ん中で立ち話をしているわけにはいかない。
腕を引き、壁際に寄って、もう一度ヤックの様子を伺った。
「ヤックは妹さんに会いに行かれたんですよね?」
「うん、そうー。チョコ恵んでもらいに」
へらっとした表情に『幸せ』の意味を見た気がして、気持ちが沈んでしまう。
ヤックは血が繋がらない妹をきっと女の子として見ているのではないだろうか。そうでなければバレンタインだからとわざわざカザンの地まで足を運ぶわけがない。過ごした時間の長さでは敵うはずもなく、女性らしさという点でもケイトはまるで自信がなかった。
しかし、次の台詞で心が浮き上がる。
「でもさー、今年は本命チョコとか渡しちゃったみたいで、兄としては寂しくもあり嬉しくもありって感じだったよ」
「……本命? 妹さん、恋人がいらっしゃるんですか」
「恋人っつうか、なんていうの? 微妙な関係?」
「そうですか!」
ヤックの妹には想う相手がおり、ヤック自身も反対などはしていないらしい。
つまりあの魅力的な妹はライバルという存在ではなかったのだ。
その嬉しさが後押しして、持参したプレゼントに手が伸びる。
「あ、あの……実は、私も……」
「あれ?! うわ、ちょ、ヤッバ! メルクんちにチョコ忘れた!」
差し出そうとしたところで、ヤックの大声が割り込み、つい動きが止まってしまった。
勢いが削がれてしまったケイトは、一度出しかけた箱を再びバッグの奥に押し込む。
「普通に怒るよね? ヤバイなぁ、取りに戻ろうかな」
戻るという言葉に反応して、ケイトも声を張り上げてしまう。
「えぇ! ダメですよ!」
戻られたら、きっと今日中にギルドハウスには帰ってこなくなってしまう。
この日にかこつけてこっそり本命チョコをと思っていただけに、バレンタインデーではなくなる明日以降では渡す勇気が萎んでしまうだろうと自分でも容易に想像がついた。
「ダメなの?!」
「あ、と、えっと、その、もう遅いですし……夕飯用意しちゃいましたし、明日にでも取りに行ったらどうかと」
「夕飯当番、ケイトだっけ?」
「はい……」
「そっか。じゃあ、ケイトの飯食いに帰ろっか」
「はい!」
固いと言われていても、好きな人の前ではケイトも女の子だ。
その言葉が嬉しくて自然と笑みが零れた。
しかも一緒に帰る間なら、焦らずともチョコレートを渡すチャンスがありそうだ。
「それにまた明日モモメノに会えるってのもお得だし」
ヤックの口から紡がれた見知らぬ名前に心臓がドクンと跳ねる。
浮き立った気持ちが嫌な予感に蝕まれ、ヤックの隣を歩きながらも徐々に足が緩くなる。
「聞いてよ、ケイトー。俺、初めて好きな子からチョコもらったんだ。あっちはそういうつもりないかもだけどさ……すげー幸せ」
好きな子。
決定的な言葉を耳にして、体温が一気に低下した。ドンドンと心臓が胸を叩く。
泣かないでいられる自分が不思議だった。こんなにも苦しいのに平然とした顔を作っていられるのは、どの訓練がよかったのだろう。いや、悪かったのか?
「そういえばケイトは渡した?」
「え?」
「本命チョコ!」
無邪気に問いかけるヤックが眩しい。
好きになったのは確かにこの笑顔だったはずなのに、見ていられなくなってしまう。
顔を前に戻し、小さな声で返事した。
「……そうですね、今年は渡せそうにないです」
「えー、もったいないよ?」
「だって、いないですもん。ギルドのみんなが一番です」
笑顔をどうにか作ろうとしたが、ケイトは結局前を見つめたまま、声の調子だけ上げて答える。
背の高いヤックはケイトがどんな表情でいるかなど知ることができず、相変わらずののほほんとした雰囲気で話を続けた。
「ケイトはいい子だなー。お兄さんがご褒美にチョコレート買ってあげよう!」
「そんなこと言うと、本当に甘えちゃいますよ?」
「甘えて、甘えて! うちの妹は全然甘えないから、寂しいんだよー」
服の袖を掴んで引っ張って子供がするように見上げると、ヤックは楽しそうに微笑んで見せた。
あぁ、とやっと理解する。
自分はヤックにとって可愛い妹の一人と同じ存在なのだと。
だったら、お言葉通り甘えてやろう。
相手にしているのが本当はただの女の子なのだとわかるまでずっと。
ケイトは悲しい笑顔でそんなことを思った。



ガッサンのギルドハウスはトドワ山岳付近を想定してます。町は捏造。たぶん旅人たちの宿として栄えてる。
日帰りできるかは知りませんw もうわからん!
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