忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

【バレンタイン01】ガールズトーク

メインギルドの話は続き物になります。
初回は準備編でうちの三人娘のお話。

ピンポイントでお気に召したカップルのみ読んでも大丈夫ですが、続けて読むなら最初からの方がわかりやすいかと思います。
時期は中盤くらいです。
まだどのカップルも成立してません。
メルクとヤックは義理の兄妹です、というのだけ頭に入れていただければ!

拍手



「それで、貴方たちはどうするの?」
ベッドの上で髪を編んでいたロザリーは、どこから始まる「それで」なのか全く説明もなしに言葉を紡いだ。
「それでって何の話?」
風呂から戻り、部屋のドアを開けた途端の会話なだけにメルクは首を傾げる。
「今をいつだと思ってるの? バレンタインに決まってるじゃない」
「あぁ……もうそんな時期か」
チェストの上に置いてある小さなカレンダーの2月14日に赤いハートマークが付けられている。
手書きのそれを書き込んだのはなんだか浮かれ気味のロザリーで間違いないだろう。
「バレンタインってなぁに」
布団の中からモモメノが顔を出して不思議そうな顔を見せる。
「モモメノ、知らないの?」
「うん」
「マレアイアは女性だけの国だからかしら? 食いつきそうなものだけれど」
「私が疎いだけかも……流行とか、全然知らないし」
「まぁそういうこともあるんじゃない? 相手がいなけりゃどうでもいいイベントだし」
「それ、相手が必要なの……?」
「一応ね。バレンタインってのはさ、一体どこからそうなったのかわかんないけど、好きな相手に贈り物をする日なんだよ。女が男にチョコレートを贈るって場合が多いかな」
「……変な日」
眉を寄せて言うモモメノにメルクは苦笑する。確かに知らない人にしてみれば、変な習慣だろう。
大抵の女の好物であるチョコレートが、男の手に渡るだけのイベントである。逆ならよかったんだけど、とメルクは密かに思っていた。
「チョコレートは恋の媚薬とも言うわ。愛しい人の心を掴むためのいじらしい努力よね」
「そうかなぁ。ウチの男共はバレンタインが近づくとうるさかったよ、寄越せ寄越せって馬鹿みたいにさ」
「メルク、ヤックも?」
少し興味を引かれたのか、モモメノは暖かな布団を押しのけて、ロザリーのベッドまで移動してきた。
「ヤックが一番うるさかったよ。アイツ、甘いもの好きだし、バレンタインに何も貰えないのは地獄に落ちるのと一緒とか言ってた。あたしからでも嬉しいのかって聞いたら、ないよりマシだって。失礼しちゃうよ」
「彼なら言いそうね」
「でしょ? モテないタイプじゃないんだけど、必死すぎて結局引かれるんだよ。馬鹿だね」
「ヤック、面白いね」
「そうかなぁ……うっとおしいだけだと思うけど」
「あの男のことはどうでもいいじゃない。大事なのはバレンタイン当日の話よ!」
「当日?」
「……私、ノワリーのところに行きたいのよ。わかるでしょう?」
言った途端にロザリーは頬を染めて、願うように胸の前で手を組んだ。
普段は強気でどんな男たちとも堂々渡り合うけれど、ノワリーのこととなると乙女らしい一面を見せる。
「もちろん彼だって忙しいわ。でも内部に協力者がいるから、当日少しなら時間をもらえると思うの」
「協力者っていつの間に」
「あら、恋は人脈も大事よ? 情報と人を制すれば恋愛も成るというのが持論ですもの」
いつもの調子で告げると、またも乙女の表情に変わる。
「勝手なのはわかっているけれど、どうにか都合付けられないかしら。その、クエストを引き受けないとか」
「うーん、いいんじゃない?」
「本当?!」
「ていうか、グリオンに直接言えばいいのに」
カリスマ型のリーダーではないが、一応はグリオンがギルドの顔である。休暇の管理やらも全てグリオンがまとめているし、上下関係が存在しない彼らのギルドにおいて話辛い相手でもない。
「それだと私だけお休みになるじゃない。貴方たちも楽しんだほうがいいわ」
「楽しむ?」
「貴方、時々とっても鈍いわね。あげなくてもいいのかしら、グリオンに?」
「……!」
自分には無関係のつもりで話していたメルクが固まってしまう。
あげるのならばグリオンにあげたいと考えなかったわけではない。でも、その一歩が踏み出せないから困ってしまう。積極的とも思えるグリオンの言動は行動にまで影響を及ぼさないらしく、どれだけ「僕が貴女を守りたいだけなんです」だの「貴女を見ているのが僕だけならいいのに」だのとメルクをうろたえさせる言葉を口にしても、ここぞというときには何故か逃げるようにどこかへ行ってしまうのだ。
全く心がわからず、グリオンに本当にバレンタインのチョコレートを贈っていいものか解答を見出せない。
「ねぇ、ロザリー。私、シャルルにあげてもいいの?」
「そうね。あのいけ好かないシャルルも貴方からもらったら喜ぶわ。可愛がってるもの」
「……だったら、バレンタインする」
ぎゅっとばねうさを抱きしめたモモメノの表情は柔らかくなる。
少し口は悪いけれど、シャルルはこのギルドの誰よりもモモメノに優しい。鈍いグリオンでは気付かないことや、ギルドの収支や生活の細々したものを担当しているメルクには言えない部分を一番に感知して、少しだけ彼女を助けてくれる。全てじゃないことが心地よく、シャルルと一緒にいれば一人前になれるような気がした。
その彼に大好きだという気持ちを込めて贈り物をするのは、とてもいい考えだとモモメノは考える。
「あ、あのさ。それで、ロザリーがグリオンに言ってくれるんだよ、ね? バレンタインのお休み」
唸っていたメルクが固まっている体をギリギリと動かしてロザリーに尋ねた。
全身から「あたしは言わない!」というオーラがにじみ出ていたが、ロザリーは全く気にしない。適任者であると思っているし、ちゃんとグリオンを納得させることができるのはメルクくらいなのだ。
ロザリーは押し切ってしまうし、モモメノの言葉はグリオンには絶対だ。彼の意思も尊重するにはメルクに言ってもらうのが一番いい。
ロザリー自身が話し合う気を持てばいいというのは意識的に無視しておく。
「貴方でいいんじゃない?」
「いやいやいや、無理だよ、勘弁して」
「どうして? ついでにバレンタインは一緒に過ごしたいと言えばいいじゃない」
「何で?! 脈絡ないよね?! おかしいって思われる!」
「脈絡も何も脈があるなら行くべきでしょ」
普段の二人を見ていれば、彼らの気持ちは明白だ。戦闘中やギルドの相談時はともかくそれ以外で二人きりにさせると、ガチガチに固まり、頬を染め、互いの表情を伺いあっては「あの」「なんでもない」の繰り返しである。スパッとした性格のロザリーからしてみれば、イライラすることこの上ない。
「脈……グリオン死ねばいいのに」
「モモメノ。大好きなメルクをあのヘタレ男に取られたくないのはわかるけれど、そんな言葉を口に出すものじゃなくてよ」
「わかってる。でもグリオン死ねばいいのに」
手の中のばねうさが、モモメノの苛立ちを受けるようにフルフルと震えていた。
刷り込みのようにメルクにくっついて歩くモモメノにとってはグリオンはまさに目の上のたんこぶ。
初めて会ったときにメルクが気に入ったのならと自分の騎士になることを了承したわけだが、その決断を軽く後悔している。いい人間ではあるのだが、メルクは譲りたくないのである。
「うぅ……でも無理って言われたらどうすんのさ。相手は同じギルドのリーダーだよ? 気まずすぎるじゃない」
「そのときのことはそのとき考えなさいな。私だって勝算があると思ってノワリーに会いに行くわけじゃないのよ」
ロザリーは胸のうちでこっそりとため息をこぼす。
メルクやモモメノと違って、ロザリーの愛する彼の心はこちらを向いているとは言いがたい。
ロザリーが竜退治よりもノワリーを第一に考えるように、彼はロザリーよりも竜退治を第一に考えるのだ。今は数分でも時間がもらえるだけ幸運だと思わなくてはならない。
彼女が竜殺しのギルドに所属しているからこそ、丁寧に扱ってもらえる。そこを誤解しないようにと、ロザリーは強く自分に言い聞かせていた。



というわけで三者三様のバレンタインです。
PR

Comment

お名前
タイトル
E-MAIL
URL
コメント
パスワード

Trackback

この記事にトラックバックする

Copyright © カナナナ : All rights reserved

TemplateDesign by KARMA7

忍者ブログ [PR]

管理人限定

カレンダー

04 2017/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31

マイギルド

ブログ内検索

最新コメント

アクセス解析