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【バレンタイン05】片目ローグ×鬱姫

長らく看板に偽りあり!な状態が続いておりましたが、ヤクモモでございます。


※ここからヤック設定※
養父であるルシェのローグにメルクと一緒に育てられた。メルクより少し年上。
涙脆くて、義理人情に厚く、優しい。言ってみればただのいい人であり、およそローグらしくない。
可愛いものが大好きで、モモメノの可愛さにころっとやられた。
グリオンは無自覚ながら恋のライバルだと思って敵視していたりする。
現在はガッサンのギルドに拾われ、サブメンバーとして人助けをメインに活動中。生来の人の良さを発揮してわりと売れっ子。

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「メールークーちゃーん! お兄ちゃんが遊びに来ましたよ~!」
調理用具を片付けていたグリオンとモモメノの耳に気の抜けた声が届いた。
同時に二階からドスンと音が響く。
やがてバタバタという足音が降りてきて、そのまま玄関に直行した。
「メルクー、開けてくれよー、外寒いんだよー」
「うっさいよ! 大声出さないで、恥ずかしい!」
彼女にしては珍しく乱暴にドアを開ける音に続き、聞こえたのがこの言葉だ。
「……まさか」
「ヤック?」
「何しに来たんでしょうか……」
不満げに呟くグリオンとは反対にモモメノはいそいそと濡れた手を拭き取り、キッチンから飛び出していく。
「ひ、姫ぇー!?」
残されたグリオンは両手に持っていたミルクパンとヘラを交互に見遣り、それから汚れたままのキッチンを見回す。
メルクから「ちゃんと片付けて」と言われただけに迷っていたがヤックの突然の訪問が気になってしょうがない。その場に手にしていたものを置くと、グリオンも慌てて後を追った。



開け放された玄関の外では長い前髪で片目が隠れた男が笑っていた。
その前には昼寝スタイルのまま髪を下ろしたメルクが立っている。
「ほら、目当てはこれでしょ?」
「さっすがメルク。よくわかっていらっしゃる! 愛してる!」
一番最後の言葉に足が止まったグリオンをモモメノが振り返る。
「なんだ……やっぱり来た」
「お客様なら出迎えなければなりませんので」
ヤックは受け取った紙袋のシールを乱暴に剥がし、中を覗き込む。
「お、うまそ!」
朝のキッチンと同じ香りが漂ってきたことに気付き、グリオンは眉をひそめた。
つまりあの紙袋にはメルクが早起きして作ったケーキが入っている、ということになる。
「もしや、わざわざバレンタインチョコを取りに?」
「ヤック、バレンタインに何ももらえないのは、地獄と一緒って」
「そうですか」
固い表情で二人を見つめるグリオンを無視して、モモメノはメルクの背後から顔を出した。
久しぶりに見るヤックは最後に会ったときと変わりなく、のほほんとした笑顔を浮かべている。
「ヤック」
声を掛けるとすぐにモモメノの姿に気付き、さらに笑みを深めた。
「モモメノ! 元気だった?」
「うん……でも来るなら来るって、教えて欲しかった」
「あー、そうだね。ごめんね。予定には入れてたんだけど、メルクに来るなって言われたら嫌だなーって思ってさ」
「そう……」
メルクが言うならしょうがない、と半ば諦めて顔を俯かせたが、スパンという軽快な音に再び顔を上げる。
片手を振り上げたメルクと頭を押さえるヤックが視界に映った。
「ってー! 何で急に叩くんだよー」
「ヤックの言い方じゃ、あたしが悪いみたいじゃん」
「しょうがないだろ、メルクが悪い。お兄ちゃんの訪問をもっと喜んでくれれば万事解決するんだって」
「よく言うよ。あたしはついでのクセにさ」
「そんなことないって! 俺、メルクも大事だもん」
「あたしは大事じゃない」
「ひどい! 兄ちゃん、マジ泣きしそうなんですけど」
なんだかんだで仲のいい兄妹である二人の言い合いはやみそうにない。
そんな二人のやり取りを見るのが嫌いではないモモメノは一歩下がって、むくれたままのグリオンに向かって手を差し出した。
「姫、その手は……?」
「返して……ヤックにあげるから」
「?!」
「あげたもの、なかったことにして。他のものに変えて。今すぐ返して」
「い、嫌です……! いくら姫のご命令でも、致しかねます!」
「逆らうの? 忠誠誓ったのは嘘? 私の願いも叶えられないの?」
「このグリオン、姫の願いとあらば今すぐにでも竜の首を取ってまいります。ですから、これだけはどうかご勘弁を!」
「嫌。もう決めたの……それとも、グリオン。私の騎士を辞めたい……?」
びくっと体が震える。
すっかり涙目になったグリオンは彼にとっては究極の選択の前に膝をついた。
念願の姫からのチョコレートと、姫の騎士であるという立場……冷静に考えれば優先すべきは後者であるが、一度は受け取った贈り物を手放す覚悟がどうしても付かない。
「そこらでやめときなよ。さすがに可哀想だからさ」
「……メルク」
きょとんとした顔のヤックを放置して、メルクが玄関のドアを閉める。
「え、ちょっ、メルクちゃーん?」
「取り込み中だから待ってて」
声だけ掛けるとモモメノに向き直り、頭を優しく撫で、視線を合わせる。
「あげたんでしょ? だったらそれはもうグリオンのものだよ」
会話の中身でなんとなく察したらしいメルクは苦笑交じりで告げる。
モモメノがグリオンに冷たいことはよく知っているつもりだが、まさか一度あげたものを奪い返すまでとはさすがに思っていなかった。ある意味、グリオンならそれを許すだろうという甘えだ。
「でも、ヤックにもあげたいの……」
「別に何でもいいんじゃない? ヤックはチョコの存在にはこだわるけど、形にはこだわらないし、安物だって泣いて喜ぶ奴だよ」
確かにヤックの笑顔を思い浮かべれば、どんなものでも喜んでくれるだろうという印象に繋がる。たとえ残念な味をしていても、意地悪な感想一つ零さずに食べ切ってくれそうだ。
「あの馬鹿兄貴にもあげたいって思ってくれたことは嬉しいから……グリオンからは取り上げないで」
「……わかった。ヤックには他のをあげる」
「それがいいよ」
こくんと頷き、今度はモモメノがドアを開ける。
「えっと、取り込み中終了?」
マフラーに顔を埋めていたヤックの頬は多少だが赤くなっていた。
天気はよかったが、寒いことに変わりはない。
「ヤック、こっち来て」
腕を掴むと家の中に引き込む。
とてとてと歩く後姿を不思議そうに眺めながら、ヤックも黙って付いていった。



片付け途中のキッチンはまだチョコレートやらナッツやらが散乱している。
テーブルからはみ出る中途半端なところに置かれたミルクパンがどうしてその位置に配置される羽目になったのかはヤックにはわからなかったが、まさしくこの空間は調理終了後という戦場の姿に他ならない。
「ごめんなさい、まだ終わってない……」
「え、そんなの気にしてないよ? モモメノも作ってたのかなーって思っただけ」
「うん」
「そっか。美味しく出来た?」
それには答えず、大皿を棚から引っ張り出してくる。
ココアパウダーや粉砂糖がところどころで山になっている皿は丸くしたあとのトリュフを載せておいたものだ。
その山の一つにモモメノは指を差し入れる。
「ん?」
粉だらけの指で何かをつまむと、ヤックの鼻先まで持ち上げた。
「……あーん」
「え?」
「あげる……」
唇に何かが当てられる。
ここのところ町を支配していたほろ苦い味がゆっくりと口の中に押し込まれ、モモメノの指がわずかにヤックの口に入り込んだ。
「っ!」
ただチョコレートを食べさせてもらっているだけ。それ以外の何でもない。
けれど胸の高まりが収まらない。
モモメノはいつもと変わらない様子でじっと伺うようにヤックを見上げ、ヤックは小さな指ごとチョコレートを味わいながらモモメノを見下ろした。
「お、おいひぃ、お」
そう伝えるとやっと安心したかのように指が引き抜かれる。
「形は悪いの……だから見ないで食べて」
こくこくと何度も頷き、次に差し出されたチョコレートを指ごと受け入れる。
「来年はちゃんと綺麗なのあげる……」
皿に残っていた全てのチョコレートをそのようにして胃に収めていたヤックは、正直味なんて全くわからないままだった。



シャルモモもヤクモモも同じくらい好きなおかげで、ウチのモモメノさんは二人の間で揺れる結果に……なってませんね。
二人とも仲良しです。
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